ことばの色彩
寒い季節になりました。
この寒さ、どうやら今年もまた冬将軍が来日しているようですが、税関職員は何をしているのでしょうか、仕事をしてください
僕にとって(そしておそらく皆さんにとっても)冬は四季の中で最も感傷的になりやすい季節です。それはたとえば、人肌恋しくなる肌寒さや、つないだ手のほんのりと温かかったこと、ひらひらと舞う真白な雪と首に巻いたマフラーの、そのどちらもがよく似合っていたあの子のこと、そういう冬の思い出たちが持っている寂しさや悲しさ、儚さなどが、「冬」を染めてゆくからだと思います。
換言すれば、「冬」というひとつの概念(あるいはことば)に、思い出や感情などといったものが次々に吹き込まれてゆくんです。すると「冬」ということばが色彩を帯びはじめ、きらきらと輝くようになります。
それと同じように、あらゆることばに命を吹き込み色彩を与えるために、僕は新しいことに挑戦したり、自分の弱さに向き合うようにしています。そしてことばがうっすらと色付いてくると、そのことばがとても愛らしく思えるのです。
そういうことを心がけていると、文章を書く時にことばが先走ってしまうことが少なくなりました。というのは、難しいことばや使いたい表現が浮かんでも、そこに実がないならことばにする意味もない、と思うようになったのです。飾らない文章の価値発見、あるいはことばへの誠実さとも言えるかもしれません。
だからおそらく、たくさん苦労してきた人の話は、苦労話そのものではなく、ひとつひとつのことばが質量と熱を持っているから、心に刺さるんだと思います。
この視点を持っているだけで、ほんの少し、あらゆることに前向きになれます。たとえばつらい経験が、ただつらいだけではなくなるのです。これは、輝くための傷である、と。これを乗り越えることで僕は、またひとつ、ことばに色彩を与えることができるのだ、うつくしく輝くことばが増えるのだ、と。
そういう観点からすれば人の重みは、とりもなおさずことばの重みであって、だから僕もあらゆることに真摯な姿勢で挑み続け、臆病さや繊細さを抱きしめながら暮らした日々を、ことばにめいっぱい詰め込んで、人の心を揺さぶるような素敵なことばの使い手になりたいなあと、つくづく思います。
Written by おうか
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