当たり前

2019年1月某日夜9時半頃、僕が惰性で牛丼をかっこんでいると、すごく汚らしいおじさんが入ってきた。見るからにホームレス。

隣で食べるのは嫌だなあと思っていると、ありがたいことに、彼はL字形の一番端に座り、牛丼の到着を待っていた。僕はもうそんなことに気を取られてしまって、僕は牛丼を味わうなどしなかった。ただ惰性で箸を動かした。

彼に牛丼が運ばれた時、彼は割と大きめの声で言った。
「あ〜、久しぶりの牛丼だ」
嬉しそうだな、よかったね。でもホームレスって三百五十円の牛丼も満足に食えないのか。
なんて思いながら、僕も食ってたわけだけど。

そしたらさ、もうそれはそれはうまそうに牛丼を食べるわけ。一杯三百五十円とかの、バイトの時給で三杯食えるあれを。まあ確かに牛丼は美味いんだけど、あんなにうまそうに食う人今までに見たことなかったから、僕、面食らっちゃって。
そんなおっちゃんを見てると、もしかして牛丼ってびっくりするほどうまいんじゃないかなってさえ思えてくる。そこで僕も食べてみる。うん、美味いよねそりゃ。毎日食ってるから忘れてたのかも。

でさ、そんなことから、やっぱり日常になるとどんなに素晴らしいことでも当たり前になるんだなって思った。
例えば毎日お母さんのご飯を食べていたらお母さんのご飯を食べることが当たり前になるけど、一人暮らしを始めたらそのありがたさに気付くように。
例えば毎日高いご飯を食べていたら、安いご飯を食べた時に急にがっくりきてしまうように。
それは当たり前になるから、普通のことなんだけど、どんなことにも一回一回きちんと価値を見出して感謝できる人間になりたいと思った瞬間だったし、よく味わって食べても牛丼は美味しかった。

Written by Kohei Suga


We Cry

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