食べられない

一回のご飯に、君はいくらお金をかけるだろうか。1000円?それは多いな。だいたい僕はお昼は350-500円くらいで、夜は800円くらいだ。
だけどたまに高いものが、というと語弊があるな、美味しいものが食べなくなって、3000円くらいするものを食べに行ったりする。
必要なら、ご飯に対して10000円支払うことも厭わないが、いくら出しても食べられないものがある。それが、母の作ったご飯だ。

今、僕の家族は僕を除いてみんなロシアに住んでいる。母のご飯を食べようと思ったら、お金を貯めて、スケジュールを空けて、航空券を予約して、パッキングなどして、モスクワに行って、タクシーに乗って家まで行かなければいけない。200000円だ。さすがにご飯に200000円は出せない。そこに時間的価値とかも加わるだろうから、プライスレスなのである。そんなわけで、僕はしばらく母の作ったご飯を食べていない。恋しい。

実家暮らしの君は気付かないだろうが、一人で暮らすようになった僕は知っている、いくらお金を出したって母の作ったご飯は食べられない。いや、200000の旅費云々と大学の単位を捧げれば食べれるからまだ幸せだ。母を亡くしたらそれこそいくら払ったって母のご飯を食べられることはなくなる。

ありきたりな話だけど、どうしようもないくらいの真実で、僕は君に先に教えてあげたいと思ったから書いてみた。

こういう実体を伴ったさりげないところから日常を失うことに慣れていって、気付けば日常だったものは全て生活から消えている。失ってから気づいては遅いし、これを何も思わないで生きているといつか後悔するだろうと思うから、僕は今あるものを大切にしたい。

明日あるはずのものよりも、昨日あったものよりも、今あるものをね。

Written by Kohei Suga



We Cry

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