小学校時代。目を閉じると浮かぶもの。

窓から見える気持ちのいい青空。
目を閉じると今でも鮮明に浮かぶ。
三階にある理科室は、全体的にとても古かった。居るだけで、私はタイムスリップを
したかのような気分になった。
実験で使われたぞうきんが、
濡れたままいやなにおいを放っていた。


私はそこの準備室が掃除場だった。
たぶん、五年生の7月頃だった。
椅子上げが億劫な私は毎日、毎日、
小さな、そして散らかった準備室の
水道のステンレスをせっせと磨いていた。
もう古びていて長年の汚れはもう落ちない。
まるで私にまとわりつく¨暗いなにか¨
のようだった。


この頃の私は、ある日学校に行くことが
できなくなっていた。いじめられてもないのに。
今思い返すと、あの頃の時間の流れは
とてもゆっくりだった。
その時期の記憶には、ことばが無い。
発したことばの数が極端に少ないからだ。

毎日の掃除。水道を磨く。たった一人で。
窓を開ける。
その瞬間、懐かしい風が私を包む。
下に見える、外の人々の声は単なるBGM。
時間はゆっくりと過ぎていく。
自分がひとりぼっちであることを
噛み締めながら。
私は雲の流れをじっと眺めた。
チャイムが鳴り、私は我に帰る。

はあ、今日も1日が終わった。長い、長い1日が終わったね。
と思いながら、教室へと少し軽くなった
足で向かう。

私の¨暗いなにか¨が消えていき、
以前のように通学を続けられるようになったのは、掃除場が変わる頃だった。

written by nami





We Cry

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